赤松健氏が手がけ、2024年春にリリースされたワーム『AKパンチ』。
独自の形状がユーザーの目を引いたが、それ以上に話題となったのが唯一無二のアクション。
「ワームにして強波動バイブレーション」である。
これまでになかった新しいワーム。
どういった経緯で誕生することになったのか?
誕生までの試行錯誤とは?
赤松氏に取材を試みた。
【キッカケは『ザリバイブ』の釣れっぷり】
ISSEIが創設されて、しばらくしたのち赤松氏はフィールドスタッフとして活動することになった。
その当時、衝撃を受け、集中的に使っていたルアーがあった。
師・村上晴彦氏プロデュースの『ザリバイブ』である。
「サイズ、波動、フォールアクションすべてが秀逸で、ボトムまで沈めてのリフト&フォールで釣るのがとにかくおもしろかったんです。デカいバスもよく釣れましたね。でも場所、時期によっては『ザリバイブ』が使えなかったんです」
『ザリバイブ』はトレブルフックが2つのバイブレーション。
ボトム狙いだと根掛かりしやすい場所では使うことができなかったし、春になると伸びたウィード周りを狙っていると、引っかかって釣りにならないこともあった。
「場所や条件を気にせずに『ザリバイブ』でやっていたリフト&フォールの釣りがやれるルアーがあれば…」
そう考え、まず試みたのがスイムベイトのあちこちをカットしてオフセットフックをセットしたもの。
根掛かりにくく、ウィードの中へ放り込んでも引っかからずに攻めることができた。
「一定の成果は出ましたが、理想的な動きからは程遠かったんです。 ”これだから釣れた” とは到底感じられないモノでした」
赤松氏はその後もいろんなワームで試していった。
『沈み蟲』をカットしてくびれをつけて動きが出るようにしてみたが、思ったよりも効果が薄い。
結果「イチから作るしかない!」と創作活動開始となった。
目指すは『ザリバイブ』の釣りが実現できるワームだ。
【アノ形状のワケ】
既製品でいろいろ試していたおかげで赤松氏には最初から欲しい動きを生み出すワームの形が思い浮かんでいた。
それがユーザーの注目を集めた「アノ形状」である。
「簡単にいうと、ザリバイブを横にしてオフセットフックをセットするボディを付けて、魚が食いやすく、ウィードに入ってもすり抜けやすいようスリムにしていったらアノ形になったんです」
最初はもっと全体的にフラットな形状だったそうだ。
バイブレーションは縦姿勢で左右に振動しながら泳ぐものがほとんど。だが、振動させるなら横姿勢で上下方向の振動でもかわまない。
その発想があの形には詰め込まれているのだ。
「思ったとおり、最初の試作で強い波動と動きが出せました。あとはデザインを突き詰めていくだけ。僕としては『セミエビ』をイメージしていたんですが、村上さんが模様を入れくださって、あの形に仕上がりました」
形状に関してはすんなりいった。
インパクトは十二分といっていい。
逆に時間がかかったのはボディとテール部分の繋ぎ目部分だった。
薄いとよく動くが、強度に不安が出てくる。
逆に厚くすると強度への不安はなくなるが動きに満足がいかなくなる。
それをギリギリで両立させるバランスを追求するのに時間がかかってしまったそうだ。
「でもこれは結果的な話で、取り組んでいた身としては夢中でやっていたんですけどね」(笑)
【AKパンチだからこそのヒットパターン】
『AKパンチ』という名も決まり、完成が見えてきたが、赤松氏には一抹の不安が残っていた。
「おもしろいワームにはなったんですが、バイブレーションをフォローするだけになってしまっているのではないか? このワームだからこその使い方、効果的な場面に確信がなかったんです」
この部分が解決できないのにリリースはできない。いや、したくない。
ちょうどそのころ季節は「秋」。
「秋は釣れそうだけど釣れにくい、ヒットパターンにハマればよく釣れる、でもそのヒットパターンがつかみにくい。ムラがとにかく大きい。僕もですがこのタイミングってバスアングラーの多くは本当に病むんですよ」(苦笑)
そんなつかみどころがない秋もテストを敢行。
ここで『AKパンチ』ならではのヒットパターンに出会うことができた。
巻いてブルブルと振動させたあとにフォールさせてステイ。
このパターンでよく釣れたという。
ほかのワームやルアーで同じように試したが、明らかに『AKパンチ』へヒットの偏りが出たのだ。
強いバイブレーションのあと、ステイしてゆらゆらさせる。
極端な動から静への移行、2.4インチというバスが食いやすいサイズ。ワームならではの食い込みのよさ。
すべてが『AKパンチ』だからこそのパターンだった。
その後、春もテストしてこのパターンでよく釣れることを検証。
「これなら誰でもわかりやすいし、使いやすいし、楽しんで釣ってもらえる」
そう確信を持つことができてついにリリースとなった。
「これまでにないコンセプトのワームなので、たくさんの方に使ってもらって楽しみながら釣ってほしいですね!」
赤松氏のバス釣りへの想いが詰め込まれた『AKパンチ』。
その釣れっぷりをぜひ体験していただきたい!