プラクティスを終えていよいよ大会当日となった。
ここからは佐藤リョーキ(以下:佐藤)がどう戦ったのかを紹介しよう。
【作戦は万全! あとはやり切るだけ!】
9名の選手が会場へ集結。
競技時間は6時スタート、16時30分にストップフィッシング。
25cm以上のバス5匹の総重量で順位を決するというルール。
選手1名に運営スタッフ1名が同行し、その場で釣り上げたバスの検寸と検量を行う。
試合時間内は検量の入れ替えが可能。
「総重量での勝負なので自分が5匹でリミットメイクしたとしても、ほかの選手が4匹で重量勝ちという可能性もあります。作戦としてはまずはリミットメイク。そこから記録を上乗せしていくことにしました」
佐藤が優勝に必要な最低ラインと考えていたのが「5匹で3〜3.5kg」だったという。
「勝負の場に決めた『北水路』でのプラクティスではバスのアベレージがサイズが30cmクラスでウエイトは500g前後でした。すべて500g前後だと3kgいきませんが、40cmUPで700〜900gクラスが2匹混じってくれれば3kgを超えることができます。プラクティスでは40cmアップが出たのでその可能性は十分あると考えていました」
作戦とイメージは万全。
懸念していたのは出発のタイミング。
「抽選順に6時から1分おきに選手が会場から釣り場へ向かうんです。僕は2番出発でした。選手だけでなく、地元のアングラーも入るだろうから、 早く行かないと! とソワソワしましたね」
佐藤の番になり出発。
北水路を目指す。
現地にはすでに地元アングラーが多くいたが、運よく狙いの場所を確保できた。
「ここで最後まで釣り続けます!」
同行の運営スタッフにそう告げて、佐藤の戦いがはじまった。
【信念でやり通す】
「タックルを1本に絞ってリグもネコリグオンリーでいくと決めました。プラクティスでいろんな釣り方とタックルを試しましたが、北水路ではネコリグが圧倒的だったし、ヤブを抜けないと水辺に行けないし、検量してもらうのに戻らないといけなかったので身軽にしたかったんです」
ヤブを抜けて水際に立ってパット群を探し、パットの切れ間の際ギリギリへネコリグを投入。
ボトムでシェイク、パットの根に軽く引っ掛けて根を持ち上げ過ぎないようにシェイクするギリギリの釣りも織り交ぜる。
注意しないといけないのは根がなく葉が浮いているだけの「見せかけパット」。
見せかけパットの下にはバスがいない。
惑わされて時間をロスしないよう、佐藤はしっかり見極めて狙い撃っていく。
ギリギリを攻めすぎてフックを根に掛けて持ち上げ過ぎてしまうとバスが散ってジ・エンド。
そうならないように細心の注意を払いながらキャストとアクションを繰り返す。
開始から1時間ほどで1匹目がヒット。
これはノンキーパー(規定サイズ外)だった。
「とにかくヒットを重ねていこう!」
佐藤は自分にそう言い聞かせた。
その後もパットの切れ間際にネコリグを落とし込んでボトム、根際での小刻みなシェイクを続けた。
移動する気配がまったく感じられない佐藤に同行の運営スタッフは「本当移動しないでいいのか?」と問いかけるほどだった。
佐藤は慎重かつ粘りの釣りを展開して、午前中に6匹ヒット。ウエイトインできたのは4匹(240g、240g、850g、250g)で1,580gだった。
狙いどおり850gを釣り上げることができたのは大きかったと佐藤。
この時点で2位だったが、途中経過は選手にアナウンスされないので、佐藤は自分がどの位置にいるかまったくわからなかった。
「もし知ったとしても安心なんでできないでしょうけど(苦笑)」
午後からはリミットメイク、そして重量の上乗せを目指す。
「自分がこれだけ釣っているのだから、ほかの選手も釣っているかもしれない。その状況はわからないので1匹でも多く、1gでも重く、とにかく釣って入れ替えて少しでも上乗せしないと優勝は見えないと思っていました」
休まず釣り続けたかったが、酷暑の中で残りの時間も考えると体力も温存しないといけない。
また、場所を休ませるためにも一旦休憩をとることに。
休憩中も運営スタッフから「本当に移動しなくていいのか?」と再度聞かれたという。
佐藤氏は「移動しない」と断言。
それは午後からの「人工インレット発生」というチャンスを確信してたからにほかならない。
【狙い通りの連発劇】
後半戦スタート。
タックルを信じ、ネコリグを信じ、16時30分まで釣り続けるだけ。
「流入パイプの近くで釣りをしていると、流入を管理する方が来られたので胸が高鳴りましたね。ここからヒットが続くはず! って」
この高鳴りは現実のものとなった。
人工インレットが発生してからタイムリミットまでになんと10匹以上のバスを釣ることに成功!
リミットメイク達成、そして入れ替えしながら見据えていた優勝に必要なウエイト「3,040g」を記録して会場へと戻った。
「正直優勝を意識しました(苦笑)。でも、安心はしてなかったですね」
【優勝! そして…】
9名が揃っていよいよ検量発表。
「発表は最後に出発した選手からだったんです。僕は最後から2番目。それまでに7選手の記録を聞くことになるので1人でも3,100…と聞こえたらその時点でアウト。緊張しましたね」
1人、2人、3人と発表されていくが、7人目までいっても3,000の声は聞かれなかった。
そして佐藤の記録発表。
「3,040g!」
会場がどよめく。
いよいよ最後の1人。その記録がアナウンスされた瞬間、佐藤の優勝が決定した。
「勝った……これで陸王本戦へ行ける」
うれしさや喜びといった感情ではなく、その場ではただただ冷静にそう考えただけだという。
「不思議な感覚でした。あれだけ目標にしていたことに手が届いたのに、なんでこんなに落ち着いているんだろうと(苦笑)」
実感が湧いたのは、大会が終了したあと、1人になったときにかかってきた赤松氏からの電話だったという。
「最初に赤松さんが電話をくださったんですよ。『有言実行で優勝できたのがすごい!』と言ってもらえました。そこではじめてうれしさを感じて、そうなんだ、優勝したんだ! と」
佐藤は3日目のプラクティスが終わったあと、赤松氏と電話で話した際、当日の戦い方を伝えていたという。
北水路でロッド1本、ネコリグオンリー、パット際ギリギリのボトム、たまに軽く引っ掛けてのシェイクで食わせること。
この釣りをやり通して3kg前後の釣果で優勝を勝ち獲る!
まさに有言実行である。
村上氏からも電話があり「やったやん! 本戦もがんばれ!」とエールをもらったという。
「お二人に祝ってもらえたことと、福岡に帰って周りの人からも祝福の言葉をもらっているうちに優勝の実感がどんどん増していきました。思えば3日目のプラティクスが終わったあとから大会が終わるまでプレッシャーがなかったというか緊張してもそれが心地よかったというか、ずっと夢中で楽しんでいたように感じます。家の玄関に優勝の盾を飾っているんですが、仕事から帰宅して盾を見るたび優勝したんだと今のほうがプレッシャーに感じています(笑)」
【2025年の本戦に向けて】
来年はいよいよ「陸王」本戦。
佐藤の意気込みはどうだろうか?
「まだまだ日程も場所も対戦相手も決まっていないのでなんともですね。来年スケジュールをいただいてから緊張感が出てくるんじゃないでしょうか(笑)。できることを最大限やって準備万全で挑もうと考えています。本戦なので対戦するのはトッププロ。これはもうすごく楽しみです!」
年内は、できなかった自由な釣りを楽しみながら、家族との時間を大切にしたいと佐藤。
しばしの休息のあと、また戦いへと向かう。
U-30で見せた戦いぶりを本戦でも遺憾なく発揮してくれるだろう。
佐藤の奮戦ぶりに期待したい!
優勝タックル&釣り方紹介編に続く