言わずもがな、ISSEIを代表する銘作ルアーである。
『ザリバイブ』は村上晴彦氏が、『AKチャター』は赤松健氏がそれぞれ手がけたものだが、実は2つとも誕生のキッカケを作ったのはある1人のアングラーだった。
ISSEIフィールドスタッフ・西川敬介氏、その人である。
『ザリバイブ』があるルアーに勝つために生み出されたというエピソード、知っている方も多いのではないだろうか。
そのあるルアーを村上氏に印象づけたのが西川氏だったのだ。
「釣りの技術も知識も釣具の目利きも高い西川くんが『ブザービーター(※1)がよく釣れるんですよ』と言うので、使わざるを得なかったんです(笑)。で、使ったら、本当によく釣れたんですよ。悔しいじゃないですか。それでこれに勝てるバイブレーションを造ろうと決めたんです」
※1)インスパイアカスタムルアーズ『ブザービーター』。バイブレーションの銘作として広く知られる
村上氏はそう振り返る。
当時はISSEI立ち上げのタイミングでもあったので村上氏はなんとしてもバイブレーションのデザインにGreen Crayfishのトレードマークである「ザリガニ」を落とし込みたかったという。
・ブザービーターに勝つ
・ザリガニのイメージを落とし込む
・時間はほとんどない
そんな厳しい条件のもと、自らハードルを上げてルアー造りに挑んだが、予想に反して早期に実現できたという。
「偶然が重なっていい形になったのと、シミーフォール(※2)という副産物までついてきたんですよ」
※)シミーフォールとはフリーフォール中にウォブリングするアクションのこと
ヒラメキ、発想力、理論と積み重ねた経験値、そして本人いわく「運」でモノ造りをしている村上氏なので、はたしてそれは必然だったのか偶然なのかは、ひとまずさておいて、こうして『ザリバイブ』が誕生。
発売から10年の月日が経っているが、現在も多くのバサーに支持されるロングセラールアーのひとつとなっている。
完成した『ザリバイブ』で西川氏はバスをバンバン釣ってその実釣力の高さを実感。村上氏ものちに『ザリバイブ』で自己記録の64㎝、5,700gのバスを釣り上げた。
村上氏が掲げた目標はクリアされたといってもいい。
もし、西川氏が薦めたブザービーターを村上氏が受け入れなかったら? …いや、きっと西川氏だったからこそブザービーターを触ってみようという気になったに違いない。
一方、『AKチャター』はどうだろうか? 赤松氏はこう振り返る。
「以前はチャターに苦手意識を持っていたんです。それとチャターだと大きなバスを狙って釣るのは難しいとも思っていました。そんな僕に西川さんが『チャターが釣れる。だから釣りに行こう』と誘ってくださったんです。あの西川さんにそこまで言わせるなら…と、一緒に釣りに行かせてもらいました。実際にその日をキッカケにチャターへの認識が変わりましたし、この経験が『AKチャター』誕生につながったんです」
その釣行ではチャターを投げる西川氏は50cmオーバーのバスをよく釣るのに、別なルアーを投じている赤松氏は釣れても40cmオーバー止まりだった。
そこで赤松氏が西川氏のチャターを借りて投げてみると50cmオーバーが釣れる。その再現性の高さに赤松氏は明らかに大きなバスがチャターに反応していると実感した。
この経験が赤松氏の認識を変え、デカいバスを釣るためのチャター、『AKチャター』開発のキッカケとなった。
もし、赤松氏があのとき西川氏と釣りに行かなければ? いや、西川氏の誘いだったからチャターに触れたのである。
こんなふうに、西川氏は陰でISSEIルアー誕生に深く関わっているのである。
「もちろん西川くんだけじゃなくて、ISSEIのフィールドスタッフのみなさんに僕も赤松もたくさんの好影響を与えてもらっているんです。そんなすごい人たちに支えられているから僕らは楽しく遊べているんです。今後もみなさんと一緒に楽しく遊んでいきますよ」
村上氏の言う「遊ぶ」とは、新しい釣りに挑む、ロッドビルド、ルアー造りに勤しむ、釣った魚を味わう。釣りにおけるすべてのことを意味する。
西川氏をはじめ、今後もメディアに登場してくる、ISSEIフィールドスタッフ陣の実力に注目されたし!