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「なんとなく」はヒラメキの素 ある夜の村上晴彦

遠方でのロケや釣りでは、前入りすることも多い村上氏。

その際、時間があれば近くの海辺で竿を出すこともしばしば。

「釣行前釣行」

なんて名付けたりもしているが、特にやることが決まっているわけではない。

ある日の「釣行前釣行」。1時間くらいしかなかったが、試作ロッドとルアーの試し投げをするため海辺へ

開発中のルアーやロッドをテストしてみたり、地元の方に〇〇がよく釣れると聞いたから試してみるなど、村上氏の気分やその日の環境、状況によって実にさまざまなパターンがある。

この日は翌日に沖堤防からのキャスティングゲームを控えていたのだが、夜の海辺に立つ村上氏の手にはそれとはあまり関係のない、あるロッドが握られていた。

「なんとなく急に使いたくなって持ってきました。ライトゲームオフショア2の前のやつやね」

『海太郎 「碧」IUS-70LS/LG-Offshore2』と違って、シルバーとブラックを基調にしている。「碧ライトゲームシリーズをシルバーのブランクスにしたのはこのロッドからやったと思う」と村上氏

ISSEI海太郎ファンなら覚えているであろう。

『海太郎 碧 ライトゲーム オフショア IUS-78LS/LG-off shore』(以下:初代オフショア)。

スペックは下記

全長:7フィート8インチ
適合ルアー:3~14g
適合ライン:6~12lb、PE/0.3~0.8号
アクション:ファスト
ガイド:Fuji ステンレスフレームSIC Kガイド
グリップ:EVA & VSSシート
素材:中弾性グラファイト(カーボン95%、グラス5%)
継数:2本
先径:0.9mm
元径:10.4mm
仕舞寸法:121cm

ちなみに現行の「通称:オフショア2」と呼ばれる、『海太郎 「碧」IUS-70LS/LG-Offshore2』(以下:オフショア2)のスペックは下記

全長:7フィート
自重:112g
適合ルアー:10~60g(SLJ)
適合ライン:PE0.3~0.8号
アクション:ライト
ガイド:FujiステンレスフレームSiC Kガイド
グリップ:EVA&TVSシート
素材:中弾性グラファイト(カーボン93%、グラス7%)
継数:2本
先径:0.9mm
元径:9.4 mm
仕舞寸法:110cm

初代オフショアは、村上氏がイカメタル、バチコンアジング、ディープアジングでの使用を想定してプロダクトしたロッドであり、ISSEIでは初となるオフショアゲーム用のロッド。

当時は前記したゲームが現在のように世に浸透しておらず、専用ロッドも少なかったので、先鋭的なロッドだった。

「繊細なアタリをとるのにティップを細く、軟らかくしたんです。あと、深い水深でもルアーを動かせて、アワセも決まるようバットはかなり強め。全長は7フィート8インチ。オフショア2とは全然違うものなんですよ。実はこれって、オカッパリの釣りでもめちゃめちゃよかったな〜と、ふと思い出して持ってきたんです」

久しぶりに触れてみると、改めていろんな釣りに使えそうな調子だと村上氏。

実際にオカッパリでのさまざまな釣りに使っていた記録が残っている。

オカッパリで見えチヌを『ハネエビ』で仕留めた。強いバットが少々大きな魚とのファイトを楽にした
陸からバチコン仕掛け(自作)をキャストして釣ったアジ。繊細なティップがアタリを逃さず、張りのあるバットでしっかりアワセが決まる

そんなロッドならば、なぜ「2」を出すことにしたのだろうか?

「初代もすごくよかったんだけど、バチコンアジングをしているときに、デカいアジを掛けたときにもう少し曲がって、粘る調子のロッドほうがバラしにくいなと思って、オフショア2を作ることにしたんですよ」

こうして完成したのが、現行の『海太郎 「碧」IUS-70LS/LG-Offshore2』というわけだ。完成品も気になれば迷わず進化させる。

常にトライ&エラーの人である。

「なんか、ちょっとおもしろかったな」

黙々とロッドの感触を確かめる。まるでこのロッドを造ったときの自分と対話するような感じだった

「なんとなく」

実はこれ、村上氏の口グセのひとつともいえる。

ロッドやルアーの選択、釣り方の変更時、モノ造りに関することなどで、疑問がある際、「なぜそうしたのか?」と問うと、たいてい「なんとなく」という答えが返ってくる。

でも、その言葉の先にはたいてい、驚くようなヒット劇や斬新なモノの誕生など「なにか」が待っている。

「なんとなく」で久しぶりに手にしたロッドに村上氏はなにやら新たな可能性を感じたのではないだろうか。

そう感じさせる、肌寒い夜の出来事だった。

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