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2013年にスタートしたISSEI。最初にリリースされたのは『スパテラ』『bibibiバグ』『ピンクロウスティック』という、3つのバスフィッシング用ワームだった。それぞれのルアーの構造、使い方、効果などは、YouTube公式「issei一誠」でも紹介されているのでそちらを参考していただくことにし、本記事では3つのワームがどのような経緯で誕生したのか、その知られざるエピソードに迫った。まずは『スパテラ』から紹介しよう。
『スパテラ』
大小のサイズが「G.C.」「海太郎」どちらにもラインナップされている、ISSEIを代表するルアーのひとつである。村上氏に聞いてみると、なんと『スパテラ』(4インチ)は造り始めてから1週間ほどで完成したという。恐るべきスピードで誕生したルアーだった。
「どこからが開発期間になるのかやけど、造ることになって納得した形になるのに1週間くらいやね。いろんなことがスムーズにいったって感じかな」
スパテラそのものの構想は以前より、村上氏の頭の中にあったという。ISSEIをスタートさせるのに際して「製品を造る」というキッカケがその構想を具現化へと向かわせた。
「ルアーに限らず、ほかの人がどういう経路、経緯でモノを開発しているのかはわからないけど、僕はすでに世にあるものを参考にするとか、こういうのが欲しいと思ってルアーを作っているんじゃなくて、ふわっと脳内にルアーの形状とか動きのイメージが浮かぶんですよ。それにルアーとしての効能を持たせたものが製品になっているという感じ」
どちらが欠けてもルアーにはならない。すぐ形になるものもあれば、そうでないものもあるという。
つまりスパテラは脳内のイメージとルアーに持たせる効能がスピーディーに合致した結果なのである。
「ベースの形状を造って、ボディからテールにかけての太さ違いを何種類か作って、テストしてみて現行のスパテラになったんです。そこまでで1週間くらいやったんですよ」
時間を長くかけたものもあるのだろうか?
「あると思うけど、正直あんまりどのルアーがどのくらいで完成したかって覚えていないんですよ。僕としては、かけた時間はそんなに気になってなくて、イメージした瞬間、それが形になった瞬間のほうが記憶に残ってるんです。時間の早い遅いはあんまり重要じゃないと思ってるんでしょうね。スパテラのことを覚えているのは、ISSEI一発目のルアーが早くうまくいった! ってことで記憶してるんでしょう」
早かろうが、時間をかけようが、イメージしたモノが形になり、その完成度が高くなければ意味はないというわけだ。ちなみにいずれの製品名も一風変わったものが多いが、モノ造り同様の感覚で名付けているのだろうか?
「そうやと思います。名前を付けるのって2通り考え方があると思っていて、ひとつは用途と特徴に応じた付け方。たとえばトップウォータールアーで虫に近い形状ならトップバグとかね。もうひとつは物体を見て『あ、これはこんな名前だろう』という僕の感覚での付け方。僕は頭でなにかの姿を描いたときにふわりとですが名前も考えたりしています。同時に言いやすさとか響きのよさも考えます。その名前がそのモノの特徴を表していればもっといいんでしょうけど、全然違っていても、響きがよければいいんじゃないかと思っています」
たしかに知らない人に『スパテラ』とは何? そう問うと、調理器具と答える人が多いかも。この名でルアーというイメージは湧きにくいかもしれない。しかし、言いやすさ、響き、なにより覚えやすさは抜群である。
「ルアーに限らず、いろんなモノのイメージと効能と名前の組み合わせとかって、いつもどこかで考えてるんですよ。それがまとまってひとつの形になってる。だから、あ! これはいい! ってひらめくことも多いんですけど、忙しく釣りしてるときとか、トークショーのときとか、夜中に目が覚めたときとかに瞬間的に閃くんですけど、たいていメモがとれないときなんですよ。だから2度と思い出せない。最近はできるかぎりスマホでメモとるようにはしてますけどね」
バス、海問わずさまざまな魚を誘惑する『スパテラ』はこんな経緯で誕生したのである。