山口県岩国市沖を発祥とした「ブレードゲーム」。
これはメタルジグのリアに小型のブレードをセッティングした「スピンテールジグ」を使い、高速リトリーブアクションで青物やサワラにジグを食わせるという釣り方である。
ISSEIにはこのゲームに適応するスピンテールジグ『サカナサカナスピン』があるが、造った当の村上氏はこう言う。
「僕、ブレードゲームあんまり好きじゃなんですよ」
このため岩国沖へ釣行しても、『サカナサカナスピン』で釣果を得たら、あとはリールを高速で巻いている同船者の中でただ1人『ネコメタル』をシャンシャンとシャクっていることが多かった(それでもサクサクと釣ってしまうのだが)。
村上氏がブレードゲーム敬遠する理由はなんだろうか?
話を聞いてみると『ネコメタル』での釣りがおもしろすぎるという個人的な趣向が要因だった。
ブレードは巻いて追わせることが基本で、巻き速度とジグのサイズ、ブレードの形状によってアピールを変化させていく。
つまりターゲットに追わせて食わせる釣り。
一方、メタルジグの釣りは、さまざまな強さ、速さ、ピッチでシャクり、フォール時間の長短の調整やジグのウエイト、フックセッティングを変えるなどして、イメージどおりにジグを操って魚に食わせる。
メタルジグのあれこれ細かく工夫して思い描いた動きで誘って食わせる過程が好き、いや、好きすぎるのである。
「『ネコメタル』での釣りはホンマ、妄想が止まらないんですよ。あ、この潮の流れやったら、ロッドをこんくらい動かしたらジグはこうなってるな〜とかイメージできるのと、それでアタってくるからワクワクするし、どんどんリズムに乗ってきてやめられなくなるんです。『サカナサカナスピン』巻いたらいま釣れるな〜と思っても、『ネコメタル』で釣りたいってなってしまう」
もはや『ネコメタル』中毒といったほうがいいかもしれない(笑)。
そんな2023年の秋、瀬戸内へ釣行した際、村上氏はこう言った。
「今日はブレードゲームをちゃんとやります」
珍しい決意表明。
なんと村上的ブレードを造りはじめたのだという。
用意した各種のジグを見てみるとこれまでにリリースした製品に使われているブレードとはまったく違う形状のブレードがセットされていた。
「最近になってブレードの動きがオモロくイメージできるようになってきたんですよ。ジグに後付けしてもジグの動きを阻害しないブレードがええな、ちゃんと作りたいなって試作品を造ってきました」
各種のジグとブレードを試しながら、ブレードを曲げて水抵抗や回り具合を確認して仕上げていくという
広島県五日市港から「ブルーアース」(水野船長)で出発。釣り場に着いてから新型ブレードをセットした『ネコメタル』『サカナサカナスピン』を投入して巻き上げてくる。
「フォールはええですね。うーん、もうちょっとブレードを曲げて水抵抗つけたほうがいいかもな。おっ、この感じええな。これだとブレードはどう回ってんのかな」
ブレードが小型であるのは、フォール時の水抵抗を抑えるため。
ブレードゲームではいち早く沈めて巻き上げるほうがアタリを得やすいからだ。
またブレードが小型であればフックが掛かりやすくでき、バラシとミスバイトを軽減できる。そしてジグの動きも阻害しにくいだろうとのこと。
村上氏は手に伝わってくるブレードが水をかき混ぜる感触とともに潮の流れの中でどう動いているのかを妄想できるのがおもしろいと言う。たまに水面でジグとブレードを泳がせてその動きをチェックしつつどんどん手を加えていく。
たしかにこの日は宣言通り、ひたすらにブレードゲームを続けていた。
「おっし、きたね〜。いい引き抵抗だったときに釣れるとうれしいね!」
これまでになかった感覚が生まれた瞬間は、それまでと同じに見えていた景色がまったく違うものになるという。これがモノ造りをしていて楽しい瞬間だと村上氏は言う。
「ブレードおもろいやん」
こうしてブレード調整が突き詰められつつ釣行を終えた(結局ガマンしきれず『ネコメタル』でシャクる釣りも3割くらいはあったが)。
新しく芽生えた感覚は、村上のオフショアゲームを次なるステップへと進めてくれるだろう。