ISSEIのイカメタルアイテムはメタルスッテ『ヌケガケスッテ』からはじまり、専用ロッドにドロッパー『キビ仔』、各種の仕掛けと、どんどん増えて充実のラインナップを形成している。
いずれのアイテムも村上氏が監修しているのだが、実は村上氏、以前はイカメタルにさほど興味を持っていなかったという。
それがなぜこれほど製品を充実させるまでに至ったのだろうか?
そのきっかけとなったのは「アジ釣り」。
えっ? イカ釣りじゃなくて?
そう、きっかけとなったのはアジ釣りだったのである。
村上氏といえば、無類のアジ好き。常々「日本全国のアジを食べ比べしたい」と言っているほどで、良型で美味なアジを求めてオカッパリの釣りはもちろん、オフショアでも「バチコン」や「ディープアジング」といった名称が生まれる以前より、遊漁船に乗って独自のスタイル(バチコンの原型)でアジを釣っていた。
とはいえ当時、アジだけ狙って出てくれる遊漁船は村上氏の周囲には皆無だった。そこで目をつけたのが、イカメタルで出港する遊漁船。夜焚きの明かりにアジが集まるのでそれを狙おうと考えたのである。
こうして船長、同船者に許可をもらってイカ釣り船の片隅でアジを釣っていたという。
そしてあるときの釣行でこんな出来事が起こった。
「ディープエリアでバチコンスタイルの釣りをしていたとき、明らかにイカと思えるアタリが多発したんですよ。シンカーになにかがまとわりつくあのアタリね。これはシンカーがスリムな棒状だったので、イカがシンカーに抱きついているんだなと。そのときのアタリの多さは異様なほどだったので釣ってみたくなるじゃないですか。それでその後のアジ釣りの時にメタルスッテを自作して試してみたんです」
試作した小型のメタルスッテは棒状に小型の単笠鈎というものだった。投じてみると難なくイカが釣れることがわかった。
ん? これだけだと、村上氏がイカにハマりそうなエピソードとは思えない。
そう、大切なのはここからだった。
「棒状のスッテだとやっぱりアタリが多かったんです。重心が偏らずステイ時の姿勢が安定するからだろうなとか思って釣っていると、ヒットしてバレたあと、そのまま誘っているとアタリがやけに増えました。でもいくらアワせても掛からないんですよ。回収したら鈎が取れていました。試作だったから強度がなかったんですね。でも、そうか、イカは鈎を嫌っていて、鈎がないほうがもっとアタるんだって実感しました」
この出来事が村上氏の脳を活性化させ『ヌケガケスッテ』がどんどん形作られていった。
「お世話になっているイカメタル名人たちや、スゴ腕船長にもいろいろ意見を聞きながら造り上げたのが『ヌケガケスッテ』なんです」
『ヌケガケスッテ』の特徴
・狙いのレンジへいち速く沈ませるために表面積が小さい円筒形をベースにしたボディデザイン
・シャクったときは抵抗が少なくまっすぐリフト。深場でも操りやすく、フォールさせると水平姿勢、止めてアタリを待つ静止状態を容易に作り出せる
・小刻みにシェイクを入れると規則正しくスッテが左右に揺れてシェイキングダンスする
・イカが鈎と金属音を敬遠すると考えて鈎は目立たない小型単傘鈎で、リーダーを接続する編み糸は長めに設定
・ヘッドには化学発光体(ルミカ『チモトほたる』がピッタリ)を差し込めるように穴を空けており、点発光でのアピールを付属させることができる
盛りだくさんのギミックが詰め込まれたが、2段傘鈎や大きめの鈎を採用しているスッテに比べると『ヌケガケスッテ』は小型の単傘鈎なので前者に比べると掛かりにくさとバラシやすさは否めない。
それを補って余りあるのが「アタリ倍増」というコンセプト。
「たとえば2段傘鈎のスッテでアタリが5回でヒット5回としたら、『ヌケガケスッテ』は20回アタッて10回ヒットという考え方です。釣りはアタリが多いほうがいいし、楽しいじゃないですか」
ちなみになぜ「ヌケガケ」と名付けられたのか?
「イカの活性が低いときも抱かせやすいし、鈎が小さくて単傘なんてダメだよなんて同船者に言われたときにスッカーンと連発させて抜け駆けできたら気持ちいいじゃないですか。そこから命名しました」
村上氏らしいネーミングである。
こうして船イカ釣りへハマりはじめた村上氏。スタートしたものは当然発展させていくので、仕掛け、専用ロッド、ドロッパーとラインナップ増加につながっていったわけだ。
アジ釣りがイカ釣りへの目覚めにつながる。きっかけはどこにあるかわからない。