これまで数々のアイテムを生み出してきた村上晴彦。
今回はISSEITIMES編集部がその思考、仕組みに迫ってみた。
【キッカケは日常の中にある】
村上氏がアイデアを閃く、思い浮かべるときはどんなときだろう?
「常にかな。釣りの話に関わらず、なにかの情報が耳や目に入ったら頭が反応して、”これならこうしてこうやって”って勝手に組み立てはじめるんですよ。これはもうクセです」(笑)
たとえばバス釣りの話をしている最中に「ちょっと待った!」と急に海ルアーのアイデアの話になったりするというのはISSEIスタッフの誰もが経験しているそうだ。

そのときも村上氏の目と耳はいろんな情報を拾っているのだろう。
こんな状態なので、アイデアは無限に出てくるそうだが、実現できなかったものも多いとか。
なぜか?
「僕、思いついたことすぐ忘れるんですよ」(笑)
いいアイデアだと思ったときに、その場でなにかに記録しておけばいいのだが、ひらめく瞬間のほとんどが ”なにかしていて手が離せないとき” なのだという。

「たとえばロケで魚とファイト中とかイベントのトークショーの合間とかにひらめいたりするんですが、そういうときはメモなんてできないでしょ。で、そのまま忘れて2度と思い出せない。だから数え切れないくらい、いいアイデアを捨ててるはずなんですよ」

その結果、あとで誰かが実現して、「あっ、やっぱりそうなるよね」と思うケースもあるという。
このため残せるときはできるだけ残そうと、ある方法をとっている。
その方法とは…。
「ISSEIスタッフに電話するんですよ。話をしてメモをとってもらって机の上に置いておいてもらう。あとで見たら思い出せるように。電話かかってくるスタッフはイヤでしょうけどね」(笑)
【奇抜に見えても?】
村上氏が新しいルアーを閃くとき、バスと海で考え方が分かれていたりするのだろうか?
「あんまりないかな。バス釣りしててもふっと海のものを思いつくんですよ。 ”あ、これはあれに使えそうやな” という感じ。逆もある。でも軸にしているものはありますね」
それはぜひとも聞きたいワードである。
「モノ作りしている人は誰しも同じじゃないですかね。 ”物理に反したものはダメ” ということ」
村上氏はこう教えてくれた。
「突拍子もない、奇抜なモノに見えても、物理に反してないモノは自然の生き物に通用するんですよ。ルアーは金属、プラスチック、ゴムの塊でしょ。普通に考えたら、魚が食うはずない。でもそれで形を作ってアクションやフォールという動きをつける、シルエットも魚の興味を引くように仕向ける。結果、無理がないから食ってくるんだと思っています」


『奇抜なモノで釣ろうとする』のではなくて、『奇抜だけど釣れるモノ』ということだ。
【おもしろいモノではなく、おもしろそうなモノ】
「あと、毎回 ”おもしろそうなモノ” を造りたいと思っていますね」
これは ”おもしろいモノ” とは違うのだという。
どう違うのだろう。
「おもしろいモノはもうすでにあるもの。”見たら分かる”って言ったらいいかな。たとえば釣り人ってルアーを見たときに ”これ絶対おもろいわ〜” って思ったりするでしょ。それってすでにおもしろさが分かってるわけですよ。でも ”おもしろそう” という感覚は、やったことがないから、おもしろそうって思うわけでしょ。やるまで想像するしかない。やってみた結果、おもしろいとは思えないかもしれない。これはどっちだろうか? ってそういうことを思い浮かべてたらワクワクするじゃないですか」
ブレない軸と、この思考のもと、村上氏は思い描いたものを形にすることを繰り返してきた。
その意識の向け方はバスも海も同じ。
考えて作って試して、膨大なトライ&エラーの末、よかったら製品にする。
それをユーザーが ”これはおもろしそう!” と感じ、使って楽しんで釣果を得てもらう。
「それが今はうれしいんですよね」
【ネーミングへのこだわり】
形にできなかったものもいっぱいあるというが、「一発OK」というものもあったのだろうか?
「”スパテラ”ですね。試作の時点でもう完成されていましたし、名前もすぐ決まりました」
実際に思い入れが強く、「スパテラは僕の魂が入っている」と公言する。

そういえば村上氏のプロダクトする製品は名前も斬新、奇抜だが、これもアイデア同様、すぐ浮かんでいるのだろうか?
「モノ造りと一緒ですね。いろんな要素が頭の中で混ざって、出てくる感じかな。モノ造りの合間にふっと出てくるときもあるし、ちょっと間をおいて出てくるときもある。名前だけ先に出来上がることもあります。自分では奇をてらっているわけではないけど、それまでにない名前であること、わかりやすさとか響きとか語感は大切にしていますね」
「海太郎」はその筆頭でもあるという。

「最初に”海太郎”って聞いたらなにそれ?(笑) ってなりそうでしょ。でも、親しみやすそうだし、覚えやすいかなって」

たしかに現在、釣具店で釣り人同士が”海太郎の◯◯”と会話の中に自然に”海太郎”が織り交ぜられている光景をよく見る。
しかし、いい名前を思いついてもすぐ忘れてしまうのはモノ造りのアイデアと同じようで、できるだけ残すようにしているのだとか。
ちなみにネーミングに関して、ファンの間では有名なエピソードがある。
それはダイワ『ハートランド』シリーズに関わるものだ。
「”冴掛”って名前があるんですけど、これはベッドでウトウトしてるときにぱっと思いついたんですよ。で、メモるもんないし、携帯もない。睡魔と戦いながらベッドの木枠に爪で刻みました。あとで探すのめっちゃ大変でしたけどね」
いい製品作りへの執念?
「うーん、これは絶対残さなアカンって思ったんでしょうよ」(笑)
モノ造りへの取り組みもネーミングも独自の世界観。
村上晴彦のモノ造りは日々こうして繰り返されているのである。
