赤松健氏が手がけるISSEIのバスロッド【Lycoris(以下:リコリス)】。
そのコンセプトは「オカッパリでデカいバスを獲る」こと。
これまでラインナップは「LRC-78H」と「LRC-78M」の2モデルだったが、2024年11月1日に新たに追加となるのがこの1本(「ISSEI壱乃日」にオンラインショップ限定で販売!)。
「LRC-70/80ML」
フィネスゲームに対応するベイトロッドだが、見慣れぬ「70/80」という数字が示すのは、7ftから8ftへレングスをチェンジできる「可変レングス機能」のこと。
ロッドの基本性能や使い方、取り扱い注意点などについては赤松氏が解説する動画をご覧いただくとして、今記事では開発経緯や開発中の赤松氏の試行錯誤する姿に迫る。
【2本構想から1本でのズーム構想へ】
赤松氏は当初、操作性重視の7ftと、赤松氏にとって絶対必要だった8ftという、2本のベイトフィネスロッドを作るつもりでいた。
「中近距離で軽量のリグを精度高く狙ったポイントへリグを撃ち込むには7ftがいいんですが、足元がブッシュだらけの場所で釣ることも多いオカッパリでデカバスとやり取りするには、8ftのリーチが不可欠と考えていたんです」
この2本構想を村上晴彦氏に相談したところこんな回答があった。
「伸び縮みさせて1本にまとめてみたら?」(村上氏)
7ftの高いキャスト精度と8ftのリーチの2モデルを1本で使えるならこれほど便利なものはないし、ラン&ガンが主体のオカッパリではロッドは少ないほうが機動性が高くテンポのいい釣りができる。
「マルチレングスかつ、理想の調子を持ったロッドを作ることができるのだろうか? 伸縮させる”継ぎ”が性能の邪魔をしないだろうか? この時は未知数でした」
赤松氏はさっそく『リコリス』シリーズを担当してもらっているロッド職人へこの構想を伝えてみた。
すると予想以上にすんなり「実現可能」という答えが返ってきた。
「職人さんはこれまでバスロッド以外ではありましたが、ズームロッドを手がけられたことがあったんです。そのノウハウをお借りしながら進めていくことになりました」
こうして開発がスタートしたのだが、長き試行錯誤も始まることとなった。
【リコリスらしさを追い求めて】
技術的に実現可能とはいえ、言葉では表しにくいロッドの”調子”を職人と共有してカタチにしていくことは難題に変わりない。
だが、絶対に妥協したくはなかった。
前述しているが、リコリスは「オカッパリでデカいバスを獲る」ことがコンセプト。
それはベイトフィネス対応モデルになったとて不変のものだからだ。
赤松氏はこれを念頭に試作とテストを繰り返していった。
ロッドのパワーはベイトフィネスとしてはやや強めで粘りのあるバランスを思い描いた。
「オカッパリでは強引にバスを引き寄せないといけないケースもあるので、フィネス感を損なわないで、いざというときは頼れるパワー設定にしたいと考えました」
パワーを持たせることで少し重めのルアーも扱える「幅」も生まれた。
次にティップ。
精度高く軽量のリグを中近距離の狙った場所へ投げ込む、操作するにはティップの張りが重要なのだが、張りが強すぎると繊細さを損なうし、食い込みを阻害する。ある程度のしなやかも持たせなければならない。
「硬軟に対する感覚は数字だけでは測れないので、たくさん試作しました。そのおかげで納得のいくバランスを見つけることができました」
ティップの調子にもかなりこだわったと赤松氏。
残るはズーム前、ズーム後の使用感の最終調整。
「スムーズに伸縮させる構造は職人さんが素晴らしいものを提案してくれました。残されたのは7ftでも8ftでもデカバスと対峙して不足ない”Lycoris”らしさを備えたロッド調子の具現化でした。そこが1番難しかったのですが…」
完成形はすでに思い浮かんでいる。
赤松氏は引き続きトライ&エラーを繰り返していった。
【一意専心が理想を形に】
ブランクスの硬軟、ガイドセッティングなどを何度試しても思い描いたものに近づかない。
赤松氏の脳内には理想の形が完璧に描けているぶん、少しの不足も見過ごすことができなかった。
「”Lycoris”は自分の理想を形にしたロッド。その実現をとことんまで追い求めよう!」
まさに一意専心。
諦めずに職人とともにトライ&エラーを続け、スタートから3年近い期間を費やして、やっと追い求めたバランスへと到達。
こうして新しい“Lycoris”【LRC-70/80ML】が産声を上げた。
『リコリス』初のベイトフィネス、ズームロッドという斬新な部分に目が行きがちだが、赤松氏が理想を求めて突き詰めて導き出した心地よい操作感を味わえるブランク設計にもぜひとも注目してほしい!