自他ともに認める、長竿、多点ガイド好きの村上氏が5ftのショートロッドを作った。
「いや、ショートロッドちゃうんです。ミニチュアロッドなんですよ」
ん? ショートロッドとミニチュアロッドではなにがどう違うのだろうか?
村上氏はこう解説してくれた。
「ショートロッド」
短いレングスであることを前提に作られたロッド。ブランクスの調子もガイドセッティングもそれに合わせたもので設計、仕上げていく。
「ミニチュアロッド」
ベースとなるロッドを縮尺して作るロッド。ブランクスの調子もガイドセッティングもベースとなるロッドをもとにバランどりしながら仕上げていく。
根本的に考え方が違うので、「5ftロッドを作る」にしても結果出来上がったものはまったく違うものになるというわけだ。
たしかに「5ft.Multi」はレングスに対してガイドがとても多い。
これは村上氏ならではの仕様。
また、グリップ周りの長さのバランスやカラーリング含め「碧(ハネエビ2やレベリング2)」を縮尺させたものだと一目で分かる。
これはたしかにミニチュアロッドだ。
「でも、もともとはまったく別な、それこそお遊び用のショートロッドを作ろうと思ってたんですよ」
当初は、短くて扱いやすく、小さな魚でも大きく曲がって楽しめる「お遊びロッド=雑魚ingロッド」を思い描いていたという。
いわゆる「やわやわロッド」である。
お遊びすぎて、製品化なんて考えてすらなかったそうな。
「で、試作ブランクスがあがってきたんですけど、これが思った以上に張りがあったんですよ」
本来なら作り直しなのだが、このブランクスの調子が村上氏にヒラメキを与えた。
「これをベースに碧のミニチュアロッドを作ったらおもしろそう」
さっそく試作して使ってみるとなかなかの使用感。
遊びがてら、テストがてらショアでもオフショアでもライトゲームのときに使ってみると、長竿で得られる、飛距離やラインさばきなどのメリットは削られはするものの、楽しく遊べる1本であることがわかった。
「試作から1年くらい遊びましたかね」
試作品だが、名前がないのも…というわけで、いろいろ使えるから「マルチ」とひとまず名付けられていた。
毎回のようにライトゲームのロケで登場させて遊んでいたので、ユーザーの目に触れる機会も多くなる。
次第に「販売しないのか?」とのご意見をいただくように。
営業を担うISSEIのマーケティング部からも「販売すべきです」と村上氏の尻が叩かれた。
村上氏としては、遊べる、楽しいとはいえ、万人受けするロッドではないから一般販売は難しいのでは? という判断で「壱乃日」の通販限定(ISSEIオンラインショップ)での販売へと踏み切ることに。
たしかに村上氏が「マルチ」と呼んでいるように、「5ft.Multi」はライトゲーム用ロッドではなく、いろんな釣りに使える幅広さを持つ。
ルアーはもちろん、エサ釣りに使ってもOKだし、船でも使える場面がある。
遊びの中からポンと生まれた「5ft.Multi」。
どう使うか、どう楽しむかは手にしたアングラーが自由に選んで遊んでほしい。