中学2年生の村上少年は行動範囲が広がり、ヘラブナ釣りに通いながらも、同級生と海釣りにも行くように。
このころには釣った魚をさばくところまで自分でも少しずつやるようになっていたという。
「料理自体は父親におまかせでした。小さい鯛も寿司にするとか工夫して食べさせてくれましたね」
魚の味にも興味を持つようになり、いろんな魚を釣っては味見をしていたという。
そんな村上少年に興味を抱かせた魚が現れた。「ブラックバス」である。
「淡水魚だけど海の魚と同じような味がするんじゃないかと、釣って食べて確かめようと思ったんですよ。それが最初のバス釣りですね」
村上晴彦、最初のバス釣りの目的は「食」だったのである。
釣り場は知り合いに聞いたブラックバスが釣れるという地元の野池。
村上少年が用意したのは「金魚」。生きた金魚をエサした泳がせ釣りで狙うことに決めた。
竿は400円で買ったソリッドの替え穂先にガイドとグリップを取り付け、グリップにはスライド式のリールシートを糸で巻き付けたうえに、曲げた針金でトリガーまで設けた。リールは小型のクローズドフェイスリールだった。
「1匹8円の金魚を20匹買ってブク(エアポンプ付きのエサ入れ)に入れて、ママチャリのカゴに乗せて釣り場まで行きましたね」
仕掛けは中通しオモリを使ったぶっ込み仕掛け。エサの金魚を鼻掛けにして池の中央に投げ込み、手前へゆっくり引いてくると、池の堤防の斜面に差し掛かったところでエサが食われる感触があった。
「釣ったことがない魚なのでワクワクしました。釣れたバスは30cmもなかったですね。そのあとも金魚をエサにして同じサイズのバスを数匹釣りました。全部魚籠に入れて持って帰って食べてみたんですけど、ま〜味がないんです。これって小さいから味がないんじゃないのかと思って、大きなバスを釣って食べ比べてみようと思いました」
調べてみると、滋賀県の琵琶湖で大きなバスが釣れるという。
さっそく村上少年は友人を誘って釣りに行くことに。
もちろんエサは金魚。
ブクに入れて活かしたまま電車に乗って、釣り場である琵琶湖の雄琴港まで運んだそうだ。
「3月でしたね。期待したんですけど全然釣れなかったんです。ギルばっかりでした」
帰宅して父親に話をすると、モエビを使えば釣れること、そして釣りをする前にいくらかモエビを撒いてから仕掛けを作って釣りをすると1匹目がすぐ釣れると教わった。
「父親の言うとおりにやったらよく釣れたんですよ。しかも40cmオーバーも多かった。ストリンガーを持っていってたんですけど、大きいのを入れ替えながら15匹以上は釣りましたね」
キープしたバスはすべて持ち帰ったという。
当時の村上少年には魚をシメて血抜きするという知識がないので、ビニール袋に生きたまま入れ、電車で持ち運んだ。
バスが時折、袋の中で暴れるので知らない乗客からは「なにが入っているのか?」と訝しがられたという。
「バスを持って帰ったら父親に自分でさばけと言われました。がんばって全部自分でさばいて塩焼きからなにから、調理していろいろ食べてみましたけど、結局バスって味がない魚なんだって結論になりました」
味に納得したことと同時に、ブラックバスはルアーでも釣れるということを知った村上少年、ルアーで釣ってみたいと新たなる興味が湧いた日でもあった。
続く