「僕にとってタチウオってちょっと前まで苦手意識がある魚だったんですよ。それが少し解消される出来事があって、同時にアイデアが沸いたから専用のものを作ることにしたんです」
村上氏に「苦手」と感じさせる魚が存在していることが意外。
タチウオのなにが苦手なのだろうか?
その理由は自分の中で釣り方と釣果が「しっくりこないこと」が多かったからだという。
「タチウオって昔はよく釣りに行ってたし、ルアーで爆釣したことも何度もあるんですよ。でもイメージ通りじゃないのに入れ食いになることもあって、僕的にはなんかしっくりこない。そういうことが多くなってくると、楽しくない。あぁ、もしかしてタチウオって僕には縁がない魚なのか? とか思ってしまった。そしたら狙いに行かなくなるじゃないですか(笑)」
釣果とイメージが一致しないから楽しくないとは村上らしい。
そんな縁遠さを感じていた魚との距離がなぜ再び近づくことになったのだろうか?
「これはね『ギルフラット』の開発まで遡るんですよ。『ギルフラット』ってボディをマンゴーカットにしてあって、めちゃめちゃ気持ちよく泳ぐんですけど、この成型技術を使って、スリムボディで気持ちよく泳ぐワームを作ろうと思ったんです。で、それにマッチするジグヘッドも思い浮かんだので同時に作ることにしました」

こうして誕生したのが『海太郎 スイミング根魚玉』と『海太郎 カタクチワーム』 4・5インチである。
しかしこの時点ではタチウオを意識したものではなかった。

「いろんな魚に効くだろうなとは思っていましたが、根魚玉ってあるように、最初はオオモンハタ攻略に使おうと考えてたんです。ほかのハタに比べてオオモンハタはエサを追尾するからレンジが広くてスイミングアクションが効くんです。それに特化したルアーになったなと」
スイミング根魚玉とカタクチワームのコンビは艶かしいアクションを生み出し、オオモンハタをはじめ、多くの魚を村上氏の手にもたらせた。
そんなある日、苦手なタチウオ釣りに行くことになり、スイミング根魚玉とカタクチワームを投じたところ、思った以上の好釣果を得ることができたという。
しかもルアーの動きとそれを食ってくるタチウオの動きがピタリとイメージできた。
釣果とイメージがともなったことであれほど縁遠いと思っていた魚が一気に急接近。
こうして専用誕生へとつながっていった。
「タチウオ仕様にするにあたって一番の課題と考えたのはフックセッティングでした。テンヤがそうであるように下向きのアシストフックが必須だなと。それはシングルフックがいいと思ったんです。そこに運よく僕が監修した、カルティバ『ジャングルワッキー』(※)が登場しいたので、アシストフックに使ってみるとベストマッチだったんですよ」

これを下向きにしてセットしておくと、タチウオがルアーの下方からバイトしてくるのにうまく対応してくれたという。
また、ヘッドとフックをつなぐワイヤーも吟味。
適度にたわんでくれる硬さを採用。
タチウオはワームに絡みつくようにアタってくることも多いが、この適度なたわみがアタリに追従してくれるので鈎掛かりをサポートしてくれるという。
「こうなるとヘッドやワームのカラーも専用のがほしいなと……なってくるわけですよ。で、ヘッドを夜光にして、ワームも夜光やケイムラをベースに専用カラーを3色作りました」
ヘッドとワームの2つが発光すれば、真っ暗な海中でタチウオにしっかりルアーを見せることができる。
「マテリアルもタチウオの歯の対抗できるよう、通常より硬めのものを使っていますし、タチウオってショートバイトで終わることが多いので、集魚材を添加してバイトが深くなるように仕向けました」

やるならとことんまで。
長年マイナスイメージだったものが、ちょっとしたキッカケで一気に反転し、新しいルアー誕生へとつながる。
これが村上晴彦の釣り脳である。
ちなみにこのルアー、ショアだけが活躍のフィールドではない。
水深20m以浅を狙う「福岡県博多湾のボートタチウオ」に驚きなほどジャストマッチするのだ。
手返しのよさや、アクションの強弱、カラーローテと多彩なアプローチが可能なのと、ワームならではの食い込みのよさが、ときにはメタルジグ、エサ釣りを凌駕する釣果を上げることもある。
なかでも28gは博多湾での釣りを経験した村上が「必要」と判断して造った「博多湾スペシャル」といってもいいジャストっぷりをみせる。
タチウオが苦手だと公言する男が本気で釣るために造ったタチウオ専用ルアー、その効果はぜひご自身で体感してほしい。