ある年の5月。
シーズン最盛期のメバルを狙って村上は瀬戸内の離島へ釣行した。
この日の天候は晴れ、風もほぼないという絶好の釣り日和。
メバル狙いなので本番は夜なのだが、昼過ぎに現場入りできたので「下見」と称して村上は『ライトゲーム・遠投』(初代)と『ネコメタル』『根魚玉』を携えてフィールドへ繰り出した。

「ラン&ガンしていればなにかしら釣れるでしょ」
気になる場所を見つけては立ち寄ってみるのだが、ど干潮近くいうこともあってか、潮位が低く、潮も動かない。
夕方近くまで釣り続けてもアタリが非常に少なく、小さなマダイやカサゴが釣れたくらいだった。


いくら夜が本番だといっても、離島でこんなにアタリが少ないと本番の夜も釣れるのかと不安になってくる。
「ホンマアタらへんな〜」(笑)
ここはいったん本番に備えて休憩…なんてことになることはないのが村上である。
「なんか、あのへん気になるな。夕マズメやし、ちょっとメタルジグ投げて沖を探ってみようか」
なにやらひらめいた様子。
車へ戻り、それまで使っていたライトゲームタックルをチェンジ。
『ハートランドリベラリスト』903ML+RSS-22と当時まだテスト中だった『SSジグ』50gを持ち出した。

ジグを着底させたらリズムよく数回シャク上げてフォール。
村上の感覚では水深は15mあるかないかくらいだという。
先ほどと違うのは、潮が満ち上がっており、流もそこそこにあることだった。
シャクってフォールを繰り返しているとなにかがジグにアタったと村上。
「藻かな? いや魚やな。初めての場所だから今が釣れるタイミングなのかわからないけど、なんか今のは魚っぽかったわ」
そして3投目のこと。
キャスト後の着底から数回シャクってフォールさせていると「コッ」とティップを叩くアタリ。
すかさずアワせるが掛からない。
「底? いや、アタリや!」
その直後のフォールで明確にティップが引き込まれたのでアワせるとリベラリストが大きく曲がる。

「エソ? いやこの引きはタイやな」
引きの感触からそう予測。
逃さないよう、慎重にやり取りして引き上げたのは45cmクラスのマダイだった。

「やった! 『SSジグ』やるじゃないですか。(地形も潮も)熟知してないから釣ったときって格別にうれしい。やっぱりひらめいたときはやってみるもんやね」
そう、あのときジグを投げるという選択をしなければ、この1匹には出会えなかった。
しかも初めて訪れた場所。メタルジグでマダイが釣れるなんて知るはずもない。
「ヒラメキを実践する大切さ」と「釣りそのものを楽しむ」感覚を改めて学ぶことができた。
こうしてこの1匹で気持ちよく夜の部を迎えたのだった。
ちなみに夜のメバル狙いは『アメミノー48SR-SF』がドハマりで良型連発だったことをつけくわえておこう。

