「赤松健が初めて世へ送り出したルアーは?」
その答えは、
「AKチャンク」でも、
「AKラバージグ」でもありません。
赤松健が初めてプロデュースして世にリリースされたルアー。
それはバス用ではなく“海用”でした。
その名は**『追乱ドロップ』**。

大阪の人気遊漁船「シーマジカル」が、ルアーブランド「マジカルベイツ」として発売したオフショア用アイテムです。
なぜ海用だったのか。
どんなルアーだったのか。
そんな知られざるエピソードを紐解いてみましょう。
ハマりまくっていたオフショアジギングがきっかけ
話は2000年代後半まで遡ります。
当時、赤松は兵庫県に暮らしており、海釣りに夢中でした。
時間があればシーバスへ。
休日はショアジギングやオフショアジギングへ。
そんな毎日を送っていたといいます(当時のエピソードはこの記事もご覧ください)。
オフショアでは、大阪湾や明石エリアで青物やサワラを狙っていました。
明石では、時季になるとタチウオが青物のメインベイトになります。
いわゆる「タチウオパターン」です。

ロングジグをフォールさせ、着底後にシャクリ上げる。
その釣りを繰り返す中で、赤松はあることに気付きました。
「サワラや青物は、着底の瞬間と着底の直前、直後、シャクりはじめにアタリが多い」
赤松は、フォールするジグを魚が追いかけてきているのではないかと考えました。
しかし、着底前後、ジグをシャクリ上げた直後までにアタらないと、それ以降のシャクり上げではアタリが少なくなってしまったそうです。

「食わせるきっかけがもう少し増やせれば……」
そこで思いついたのが、
「ジグの上に、もうひとつ“食わせるもの”を付ける」
という発想でした。
これが『追乱ドロップ』の始まりとなったのでした。
最初はタチウオの切り身から
最初に試したのはワームではなく、釣ったタチウオの尻尾をカットしたものだった。

これをジグの約30cm上へ枝鈎(チヌ鈎)を出して取り付けてみます。
ジグが着底するとラインが緩み、切り身がふわりと漂う。

その動きに、魚は面白いほど反応しました。
「これは釣れる!」
次はワームで試しました。
これも釣れる。
そして赤松は考えます。
「それなら、樹脂製にしたほうがもっと使いやすいんじゃないか?」
試作してみると、魚の反応はさらに良くなりました。
しかし個人で樹脂製のものを大量に作るのはなかなか難しいもの。
そんなところへ頼もしい協力者が現れたのでした。

コンセプトは「ジグの上でもう一度食わせる」
協力者とは、赤松がよく乗船していた遊漁船「シーマジカル」の嶌原キャプテン。
赤松が考えたコンセプトと手作りルアーに可能性を感じた嶌原キャプテンが製品化を後押し。
こうして「追ってきた魚を乱して食わせる」をコンセプトと名前に持つ
『追乱ドロップ』が世に送り出されたのでした。

ももちろん、メリットばかりではありません。
ジグの上にもうひとつ抵抗体が加わるため、ジグ単体と比べればアクションの自由度は多少犠牲になります。
それでも、ジグでは食わせきれなかった魚にもう一度口を使わせる――。
“食わせる能力を付与する”。
そのコンセプトは、赤松が現場で感じた課題を見事に解決するものだったのです。
これがモノづくりの原点
今では「AKチャンク」や「AKラバージグ」で知られる赤松健。
しかし、その原点は海用ルアー『追乱ドロップ』でした。
これはAKシリーズにも共通しているものがあります。
「現場で困ったことを解決する」
という発想。
『追乱ドロップ』
それは赤松健というルアービルダーの原点なのです。

